頭痛

頭痛のイメージ写真

頭痛は一次性頭痛(片頭痛、筋緊張性頭痛、など)と二次性頭痛(腫瘍、出血などの原因のあるもの)に大別されます。

一次性頭痛

片頭痛

頭痛外来を受診する患者さんにおいては最も多い頭痛です。若年期に発症し、1回数時間から3日ほど継続し、吐き気などを伴い、生活に支障がでます。

  • 頓服薬の効果が期待できます。
  • 予防薬も発作を60%程度軽減する効果があります。
  • これまでの予防薬で効果の無い方に、全く新しい注射薬が2021年から使えるようになりました。
片頭痛に関する当院での取り組み
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当院では、日本頭痛学会のガイドラインに準拠しつつ、国際的な動向も考慮しながら、治療方法を患者さんと相談しています。

急性期治療
  • 現在使用可能なトリプタン製剤を中心に治療薬を選択します。
  • トリプタン製剤が使用不可能な場合は、一つ前の世代の頓服薬を選択するか、もしくは、予防治療を強化します。
  • 日本で使用可能なトリプタン製剤は、現在5種類存在します。その中の1種類(イミグラン®)にのみ、内服以外の製剤(点鼻・皮下注射)が存在します。トリプタン製剤の選択には、予防薬との同時使の可否、授乳の有無、頭痛と月経との関係などの考慮が必要です。
  • 強い症状が72時間以上継続するとき(片頭痛の重積)や、嘔気が強くて内服ができないときは、クリニックにて、ベッドで休息をとっていただきながら、点滴と皮下注射にて速効性のよい治療を提供いたしますのでご利用ください。
予防治療

日本においては、まだ、片頭痛の十分な予防的治療が浸透していないのが現状です。当院では、患者さんの生活の質の向上を第一に考え、適切な予防治療の導入を積極的に行っています。

  • 月に2回以上の頭痛発作のある場合は、予防治療を相談すべき状態です。
  • 予防治療には、ガイドラインで推奨グレードが最も高い3つの内服、(抗不整脈薬:プロプラノロール、抗うつ剤:アミトリプチリン、抗てんかん薬:バルプロ酸)を中心に用います。抗てんかん薬は、妊娠を考えている女性には適しません。
  • 予防薬の選択には、その予防薬の特性を考慮しなければなりません。女性の妊娠のほか、眠気、勤務の規則性、併存する疾患や使用中の薬剤(気管支喘息の治療歴や、ほかの抗うつ剤の内服歴など)を細かく考慮します。
  • また、保険適応ではないものの、高い予防効果が認められている、さまざまな領域の既存薬が存在します。特に、高血圧をお持ちの方は、既存の高血圧の治療薬のうち、片頭痛に対して良好な予防効果が認められているものに変更することも手軽で、かつ重要です。
  • 通常初回処方時は、約2週間後に再受診していただき、眠気や血圧低下などの副作用の程度や、頭痛の発作頻度の減少などを伺います(予防薬の効果判定には2-3ヶ月をかけることが推奨されていますが、治療初期から頭痛の減少が見られることもかなり多い印象です。)その後は、様子を見ながら月に1回程度受診していただきます。
  • 良好な予防効果が得られた後は、約半年経過した後に、予防薬の終了を検討いたします。
  • CGRP関連製剤の適応について。
    片頭痛の痛みの中心物質であるCGRPに対する抗体(または受容体に対する抗体)の注射薬が2021年に日本で3剤(エムガルティ®、アジョビ®、アイモビーグ®)認可され、当院でも導入しております。既存の予防薬で効果の少ないかた、既存の予防薬が身体的事情で不適応のかたが適応になります。臨床試験では発作の回数が90%以上の方で半分以下になり、また、消失する方も10%程度認められた薬剤です。保険が適応される薬剤であり、1ヶ月に1回の注射で、3割負担で月13,500円程度です(エムガルティ®に関しては、初回は2本注射しますので、倍程度です。)

緊張性頭痛

  • 肩や頸部の筋肉の張りなどから来るとされる頭痛で、一般社会ではこれが一番多いとされています。
  • 寝込むほどの頭痛では無く、運動などの非薬物療法が基本ですが、ひどくなった場合には、さまざまな薬物療法も期待できます。
緊張型頭痛に関する当院での取り組み
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緊張性頭痛は、一般社会では最も多い頭痛ですので、症状の程度はさまざまながら、これに罹患した経験のある方は多いのではないでしょうか。一般に、生活支障度が低いので、この疾患自体が大きな問題になることは少ないのですが、いくつか注意が必要です。

  • 頭痛の診断は、ガイドラインに従って厳密に行われますが、二つ以上の頭痛を有している事が珍しくありません。もし、緊張型頭痛と片頭痛を合併している場合には、より生活の質の低下を招く片頭痛をまずはターゲットとして治療する必要があります。
  • 片頭痛の予兆、前兆、頭痛の一連の発作の中には、肩凝り、頚部痛がかなりの割合で含まれますが、これをもって緊張型頭痛と診断されていることがまれならずあります。また、片頭痛の診断基準では、両側性であること、拍動性であることは必須とされていません。重視されているのは、日常生活の支障度です。隠れている片頭痛を見逃さないことが、症状の改善のためには非常に重要です。
  • 1ヶ月に10日以上の頭痛がある場合は、予防的薬物療法の対象になります。最も有効性の高いとされる抗うつ剤を中心に、患者さんの生活背景などを考慮しながら相談しています。頭痛の程度に関わらず、お気軽にご相談ください。

群発頭痛

  • 男性に多い、比較的まれな疾患です。
  • 片側の顔面から頭部に激痛がはしり、頭痛の中では最も激烈なものとされます。
  • 発作時は、酸素吸入のほか、注射や点鼻が有効です。
  • ほか、群発期には、予防的内服も効果があります。
群発頭痛に関する当院での取り組み
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  • 群発頭痛は最近インターネットの発達に伴い、ご自分ですでに診断をつけて受診される患者さんも多いです。片頭痛との鑑別は、群発頭痛は1回の発作が約1時間と短いこと、1日に何度も生じること、寝ているより動いているほうが気が紛れること、などがあります。有名な結膜充血、流涙、鼻閉などはご自分では気がつかないこともあります。
  • 発作の群発期間は数週から数ヶ月です。初めて群発頭痛と診断した患者さんには、予防治療を導入します。一般的には、抗不整脈薬;ベラパミル、副腎皮質ステロイド:プレドニゾロンをまず1週間分程度処方します、経過を見て副腎皮質ステロイドを漸減します。発作用の薬剤も必要ですが、現在のところ日本で保険適応があるのは、スマトリプタン(イミグラン®)皮下注射キットのみです。在宅自己注射ですが、特に難しい手技を要さず行えます。もちろん、使用前に十分ご説明いたします。
  • 発作の最中は、行動するのが難しいので受診される方は少ないですが、高濃度酸素の15分程度の投与が非常に有効です。当院でも常備しておりますので、ご利用ください。

二次性頭痛

  • これは根本的な治療を要する疾患から生じた頭痛です。
  • 脳卒中、脳腫瘍、外傷などさまざまな疾患が原因になります。
  • 頭痛の診療では、まず、これでないかどうか、MRIなどで検査を行います。